T-15主力戦車
要目
全長10m
車体長7m
全幅3.6m
全高1.8m
重量45t(最小戦闘重量)
60t(最大戦闘重量)
速度75km/h(整地)
60km/h(不整地)
(いずれも最大戦闘重量時)
乗員3名
搭載兵装52口径125mm滑腔砲
12.7mm重機関銃(砲塔上面)
40mmグレネードランチャー(砲塔上面)
7.62mm汎用機関銃(主砲同軸)
エンジンV型12気筒4ストロークディーゼルエンジン(出力最大2100馬力)

概要

T-15はグラン・メキシコ軍が運用している主力戦車。2015年に制式採用された。主力戦車としては第3.5世代、または第4世代に分類される。グラン・メキシコ軍は「世界初の第4世代主力戦車」を自称している。その根拠として、T-15がハードウェア面において既存の第3および3.5世代主力戦車を凌駕する攻撃力・防御力・機動力を持ち、なおかつソフトウェア面においても既存の第3および3.5世代主力戦車を凌駕する優れた射撃管制システムとデータリンクシステムを持つことが挙げられている。ユニットコストは初号車では500万ドルと、グラン・メキシコ軍の戦車としては極めて高価であったが、毎年300両というハイペースでの量産が継続された結果、2022年現在、1両当たりのユニットコストは米ドル換算で300万ドルにまで低減されている。グラン・メキシコ軍はT-15を2030年までに4500両、T-15Aを2030年までに1500両調達して主要な打撃部隊が装備する戦車を全て代替する方針である。

開発経緯

T-15の開発は2007年から開始された。グラン・メキシコ軍ではこれまで、戦車部隊をハイローミックスで運用してきていた。これは性能とコストの異なる2種類の戦車を混成配備する運用形態であり、敵機甲部隊を迎え撃つための高い対戦車戦闘能力を持った主力戦車と、友軍歩兵を支援するための直掩戦車の2系統の戦車を開発、前者を戦車部隊に集中配備、後者を歩兵部隊に分散配備するべきである、というものであった。ハイローミックスの「ロー」として1966年にT-65が、「ハイ」として1969年にT-69を開発したことを皮切りに、グラン・メキシコでは戦車開発が盛んにおこなわれた。1974年にはT-69の技術をT-65に盛り込んだT-74が登場、さらに、より先進的な技術を取り入れ西側第3世代主力戦車と互角以上に戦闘可能なT-84が開発されると、廉価で歩兵部隊の直掩に使用される戦車であるT-74やT-79と、高性能の射撃管制システムを備えた対戦車戦闘に特化した戦車であるT-84として棲み分けがなされた。さらに、T-74にT-84の技術を盛り込んだ普及型高性能戦車であるT-90と、西側主力戦車を圧倒する性能を持つ「重戦車」ことT-95が開発された。しかし、T-95は高価で重量が大きく運用に制約があったため、T-84の改良型であるT-96とT-90が並行して配備され続けた。しかし、2000年代に入り、他国においても第3世代主力戦車のみならず、第3世代主力戦車をベースに、高性能な射撃管制システムとデータリンクシステムを搭載した第3.5世代主力戦車が大量に配備されるようになると、80年代から90年代にかけて開発されたT-90やT-96はその優位性を失いつつあった。グラン・メキシコ軍は暫定的に、2006年からT-90に新型主砲と新型FCSを統合した新型砲塔を搭載、劣化ウランを使用していた旧式複合装甲モジュールを新型拘束セラミック装甲モジュールに換装、などといった「大規模近代化」改修を実施、これによりサスペンションなどを除いてT-90の性能を限りなくT-96に近づけ、歩兵部隊を直掩する戦車の対戦車戦闘能力を大幅に向上させることに成功した。

さて、当時のグラン・メキシコ軍は、多種の装甲戦闘車両の同時配備による調達や整備上の課題に直面しており、これを解決するために「統合整備計画」が推進されていた。主力戦車についても1種類の戦車で代替するか、それとも従来通りのハイローミックスコンセプトを維持し2種類の車体を開発するかどうかで軍内で意見が分かれたため、当初この「統合整備計画」に主力戦車級の共通車体シャーシの開発は含まれていなかったが、暫定的にT-90大規模近代化型であるT-10と新規開発される「共通重装軌車両」に基づく次世代主力戦車をハイローミックスし、将来的には次世代主力戦車で全てを代替することが決定された。こうして、「共通重装軌車両」の設計に基づき、ハードウェアとソフトウェアの両面で他国戦車を圧倒する性能を持ち、さらに今後数十年間運用するにあたって十分な拡張性を有する戦車の開発を要求した。開発は2007年から2012年にかけて、試作は2007年から2011年にかけて、試験は2009年から2013年にかけて行われた。2014年より量産が開始され、2015年中に軍に133両が納入された。長らく国内のメディアでは「新型戦車」「T-14」などと呼ばれていたが、2020年6月、参謀本部広報担当者より「T-15」の制式名称が発表された。

設計

火器

主砲
T-15の搭載する主砲「CT-15」は、既存の主力戦車で使用される現用弾薬が射撃でき、なおかつ威力向上のために新規開発される徹甲弾や、将来開発されるより高威力な徹甲弾に適合する火砲として開発されている。この要求を満たすため、口径は125mmに設定されている。主砲の設計の一部は「CT-84」や「CT-96」といった前世代の125mm戦車砲と共通しているが、新型の特殊高強度鋼を開発、製造段階では水圧によって特殊高強度鋼を自緊させるなどすることで主砲の最大薬室圧力を750MPaまで引き上げることに成功したため、新型砲弾を使用した場合、その攻撃力はこれらの既存の125mm戦車砲に大きく優越している。口径長は52で、砲身長は6.5mに達する。温度の影響による砲身の歪みを防止するためサーマル・スリーブの形状が従来の戦車砲から変更・小型化されている他、砲身のゆがみを検出するため、レーザーを用いた砲口照合装置を装備している。また、主砲は上下左右ともに0.1ミル単位で電気式2軸安定化を受けているため、目標を追尾し続けることができる。低車高であるため砲塔単体での俯仰角は-5~10度に過ぎないが、後述するサスペンションシステムを用いることで車体そのものを傾斜させてこれを補うことができ、最大俯仰角は-10~15度に達する。

2020年の軍事パレードでは、T-15の改良型として、135mm滑腔砲「CT-18」を搭載したT-15Aが登場した。「CT-18」については砲口径を除いてほとんど情報が公開されていないものの、軍事パレードで撮影された画像から砲身長は6.5~7m、よって口径長は48~52と推測されている。「CT-15」と同様の形状のサーマル・スリーブや、レーザー砲口照合装置と思われる装置の搭載が確認されている。最大の特徴は電子熱点火システムを採用していることで、後述する専用砲弾のプラズマインジェクタと組み合わせることで、様々な点で主砲と砲弾の特性を向上させている。このシステムの搭載のため、ピーク時に120kWの電力を供給可能なコンパクトな高電圧充電器および大容量コンデンサを搭載している。2021年に公開されたデモンストレーション映像では、砲身の先端にワイングラスを乗せ、不整地走行中にも砲身を完全に水平に保つことで一滴もワインがこぼれない様子を見せており、主砲安定化装置の高い性能を披露している。
砲弾
従来、グラン・メキシコ軍の戦車は徹甲弾、多目的対戦車榴弾、破片効果榴弾の3種の主砲弾を混載していた。T-15では、新型砲弾「APE-17」を統合したことで、基本的に搭載する砲弾は徹甲弾と多目的榴弾の2種類に絞られた。
対戦車戦闘で使用する徹甲弾は、T-15の改良された「CT-15」戦車砲からの発射のために開発された専用新型砲弾「PB-14」APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)あるいは「PB-14」の廉価型である「PB-16」APFSDSである。

「PB-14」は標準的な構造のAPFSDSでありながら、同等口径の主砲の発射するAPFSDSの中で最大級の破壊力を持つと言える。発射薬の重量は10.8kgにも達する(例えば、「PB-96」の発射薬は8kg、「PB-08」の発射薬は9kgである)。装弾筒は軽量な複合材製で、侵徹体に発射薬の強烈なエネルギーを伝える。侵徹体の砲口初速は最大で2000m/sに達する。

侵徹体は長さ1100mm、直径30mm、重さ12kgで、チタニウム合金製の風防・トレーサー、高強度鋼製の鞘、そして全長約1000mmのタングステンカーバイド製の弾体からなるハイブリッド方式となっている。これはAPFSDSの着発を検知し、鋼板等を爆薬で飛翔させて弾芯を破砕して貫徹力を大幅に減衰させることが可能な、低感度爆発反応装甲に対応するためのものである。APFSDSに対抗可能な爆発反応装甲は、APFSDSの侵徹体と同等の口径である20~40mmの機関砲弾などが直撃した際、誤って起爆することを防ぐため、衝撃波に対し相当に低感度に設計されている。そこで、「PB-14」では、まずタングステンに比べて低密度なチタニウム合金製の風防と高強度鋼製の鞘が目標に着弾することで、衝撃波の大きさを重金属製の弾芯を持つ機関砲向け徹甲弾と誤認させ、爆発反応装甲を起爆させずに貫徹することを目論んでいる。

また「PB-14」ではタングステンカーバイド製弾芯の形成時に特殊な加工方法を採用している。APFSDSの弾芯にタングステンを使用する場合、着弾し弾芯が装甲に衝突する際に先端部の形状がマッシュルーム状に変形、先端部の外径が衝突時の外径よりも大きく広がることで急激に貫徹力が低下するとされている。一方、劣化ウランを弾芯に使用した場合このような現象は起きず、逆に着弾時には先端部がさらに尖った形状に変化し、ますます貫徹に適した形状となる。この作用は「セルフ・シャープニング」と呼ばれる。このため、同速度でタングステン製侵徹体のAPFSDSと劣化ウラン製侵徹体のAPFSDSを着弾させた場合、劣化ウラン弾芯製APFSDSの方が貫徹力で10%程度勝るとされている。実際に、90年代のグラン・メキシコ軍の試験では、同初速で同じ長さの侵徹体を発射する場合、タングステンカーバイド製の侵徹体の2000m先の均質圧延鋼板に対する貫徹力と、劣化ウラン製の侵徹体の3000m先の均質圧延鋼板に対する貫徹力が同程度とされていた。一方、劣化ウラン製侵徹体のAPFSDSの最適着速は1700m/sで、それ以上の速度ではかえって貫徹力が低下する。タングステン弾芯製のAPFSDSの最適着速はおよそ1800~1900m/sで、この速度域においては劣化ウラン弾芯製APFSDSを上回る貫徹力を発揮する。

このため、「PB-14」の開発に当たっては、タングステンカーバイド製侵徹体でありながら、「セルフ・シャープニング」現象を起こすような理想的な侵徹体を目指して開発が行われた。そこで「PB-14」の侵徹体では、アモルファス金属粒子をマトリックス層として分散させた状態でタングステン粒子をアモルファス金属粒子間に一体的に接合、目標への着弾時にアモルファス金属粒子のマトリックス層が局所的に剪断破壊しながら目標の装甲を侵徹するように構成している。これにより、タングステンカーバイド製でありながら、「セルフ・シャープニング」現象を生じて貫徹に適した形状を維持したまま目標装甲内部を侵徹するような侵徹体を製造することに成功している。「PB-14」は2000m先の目標に対し、均質圧延装甲換算でおよそ1200mmの貫徹力を発揮する。

また、「PB-14」の廉価型として、「PB-16」が採用されている。これは「PB-14」のタングステンカーバイド製の弾体を劣化ウラン製の弾体に置き換えたものである。侵徹体は長さ1100mm、直径30mm、重さ12kgで、チタニウム合金製の風防、高強度鋼製の鞘、そして全長約1000mmの劣化ウラン製の弾体からなる。ハイブリッド方式の利点は前述の通りである。弾体は、劣化ウラン、バナジウム、ニオブなどの合金となっているが、詳細な組成は公表されていない。劣化ウラン製侵徹体の最適着速である1700m/s付近で目標に着弾させるため、発射薬量が調整されており、砲口初速は1750m/sに抑えられている。「PB-16」は2000m先の目標に対し、均質圧延装甲換算でおよそ1060mmの貫徹力を発揮する。グラン・メキシコ軍は、「PB-14」が高価であるため、当面は「PB-16」を大量に配備する方針である。

その他の目標との交戦には、従来の多目的対戦車榴弾および破片効果榴弾を代替する「APE-17」多目的榴弾を使用する。「APE-17」には敵の対戦車班のような軟目標から、装甲車やコンクリートトーチカのような硬目標までを攻撃可能とすることが求められた。計画段階では在来型の多目的対戦車榴弾や粘着榴弾など様々な弾種が検討されたが、最終的には、低感度爆薬を使用する多目的信管を備えた榴弾が設計された。このようなコンセプトのため、「APE-17」は通常の榴弾よりも分厚い弾殻を持つが、1200m/sという榴弾としてはかなりの高初速で発射されるため、起爆時に生成される破片の飛翔速度は従来の榴弾のそれよりも速くなっており、より小さな破片でも十分にソフトスキンを殺傷できることから、より多くの破片をより細かく生成するように設計されている。またこの高初速により、炸薬の炸裂で生成される破片の速度よりも砲弾自体の速度が上回り、見かけ上全ての破片は前方に飛翔するため、キャニスター弾のような運用が可能である。「APE-17」のため、オクトーゲンをベースに、コンクリートトーチカに高速で衝突しても信管が作動しない限り起爆せず、それでいて高い殺傷能力を兼ね備える新型爆薬が開発されている。この新型爆薬により、「APE-17」は弾頭を12.7mm弾で射撃しても起爆しないほどの低感度を備える。「APE-17」は、プログラマブルかつマルチモードな信管を備えている。この信管は、着発、遅延、エアバースト、近接の3モードで動作することができる。遅延信管モードでは、戦車を除く大半の装甲車両や、コンクリートトーチカのような硬目標を撃破可能である。エアバースト射撃時は、レーザー測距装置から起爆時間を設定し目標上空で起爆する曳火射撃を行うことができる。近接信管モードでは、レーザーを用いて目標への接近を検知し爆風を指向できる。これは主にホバリング中のヘリコプターなどに対して使用される。動作モードの変更は砲手席のディスプレイで変更可能である。

CT-12の対硬化目標射撃

CT-12の曳火射撃


T-15Aの搭載する「CT-18」135mm滑腔砲は、「CT-15」と同様、徹甲弾と多目的榴弾の2種類の砲弾を搭載しているとされている。搭載する徹甲弾は「PB-20」、多目的榴弾は「APE-21」である。「PB-20」は「PB-14」の拡大型と見られており、重量22.5kg、直径40mm、全長1400mmのタングステンカーバイド製ハイブリッド侵徹体を初速2000m/s以上で発射し、2000m先で1680mmの均質圧延装甲を貫通する能力があるという。「APE-21」は「APE-17」の拡大型とみられており、口径が拡大した分、炸薬量も増大、危害半径や対べトン攻撃力などは増加していると考えられている。またこれらの砲弾は2010年代前半に行われた電熱化学砲の技術実証試験の技術のフィードバックを受けて開発されており、従来式の電気雷管に代わり、プラズマインジェクタによる全く新しい点火システムを備えているという特徴を持つ。プラズマによって瞬間的に大きなエネルギーを与えることができるようになったため、装薬の極低感度化による生存性向上と、装薬温度に関わらない安定した燃焼や、各砲弾の製造時の公差に起因する燃焼開始タイミングのバラつきの改善による命中精度向上を実現している。

「CT-15」および「CT-18」はガンランチャーとしても運用でき、「MAT-09」対戦車ミサイルが発射可能である。「MAT-09」対戦車ミサイルは6kmの射程をマッハ0.9の速度で飛翔する能力を有しており、非冷却式の赤外線画像シーカーを搭載、撃ちっぱなしで誘導が可能である。必要に応じて、弾薬データリンクを介することによりシーカーの映像を車内に中継し、砲手または車長によって目標を選択して攻撃することもできる。ダイレクトアタックモードとトップアタックモードの2種類の攻撃モードがあり、通常はトップアタックモードでの攻撃を行う。トップアタックモードでは、発射されたミサイルはデュアルスラストロケットモーターで加速し、上空150m付近を亜音速で飛翔、敵戦車の脆弱な天板装甲を狙い撃ちする。弾頭はタンデムHEAT弾頭となっていて、均質圧延装甲換算で800mm以上の装甲貫徹能力を持つ。戦車の他、低速で低空を飛行中の攻撃ヘリなども交戦の対象となる。

T-15の運用する各種砲弾とミサイルは全て、後述する弾薬データリンクに接続できる。この弾薬データリンクを用いることで、砲弾の着弾を正確に観測できる。詳細は後述する。
自動装填装置
T-15の自動装填装置は、ベルトコンベアによる次弾装填方式を採用している。自動装填装置のマガジンは砲塔後部にあり、ここには18発が搭載可能である。この他、車体に砲弾24発分を搭載するスペースが設けられている。乗員の生存性向上のためにマガジンにはブローオフパネルが設けられており、誘爆時に爆風を外側に逃がすことで乗員に被害が及ばないようにする。自動装填装置は4秒で次弾を装填する能力があり、毎分最大15発という高い速度で砲弾を発射することができる。自動装填装置と弾薬搭載スペースは誘爆を防ぐため、弾片防止ライナーを装備、また引火を防ぐため、自動消火装置も搭載されている。
その他の武装
T-15は砲塔上部にユニバーサルタレットシステムという名称で開発された「TU-01」複合リモートウェポンステーションを搭載することが可能である。通常、ここには12.7×99mm弾を使用するAP-98重機関銃と、40×55mm弾を使用するLGA-96グレネードランチャーが搭載されることとなっている。可視光カメラモードと赤外線カメラモードに切り替え可能な光学照準器とレーザー測距装置を有し、車長が車内から操縦して目標を攻撃することが可能である。
また、主砲同軸に7.62×51mm弾を使用する汎用機関銃AM-62を搭載している。

ベトロニクス

索敵能力
索敵用のセンサーとしては、車長用パノラマサイト、砲手用サイト、全周監視カメラ、ミリ波レーダー、ESMシステム、レーザー警戒システム、偵察用無人航空機が使用される。
車長用パノラマサイトと砲手用サイトはどちらも砲塔上部に取り付けられており、高解像素カメラ、熱線映像装置、レーザー測距装置を統合している。サイトは倍率1~20倍の無段階可変倍率方式で、車長と砲手はそれぞれの座席の1080pハイビジョンモニター(T-15Aでは4K解像度に改良)で目標を捜索することができる。優れた画像安定化技術による高解像度のサーモグラフィーにより4~5km先の戦車大サイズの目標を検出・識別することが可能で、夜間戦闘での索敵能力に優れる。車長用パノラマサイトは、オーバーライド照準能力およびオーバーライド射撃能力を持っている。なおこれらのサイトは、主砲と同様、0.1ミル単位で電気式2軸安定化を受けている。タッチパネルから目標をロックオンし、砲と共に自動で追尾することができる。従来のT-95やT-96やT-10の車長用サイトや砲手用サイトも、熱源集中部に対する自動追尾を行うことで、目標を自動追尾する能力は有していたが、T-15では追尾目標として熱源集中部のみならず、可視光カメラによる車両形状の識別を併用、その上で追尾点のばらつきが小さい方を適宜選択し続けることで、従来よりも高い追尾能力を確保している。

全周監視カメラは、車体全周の高解像度は可視光及び赤外線映像を提供する。このシステムは最大で3km先の戦車大サイズの目標を検出・識別することが可能である。カメラは砲塔全周をカバーする形で計6か所設けられており、その映像は全て隙間なくつなぎ合わされて1つの360度立体映像を作り出す。全ての乗員は後述するヘッドマウントディスプレイによってこの360度立体映像を見ることができる。システムは、レンズに汚れなどが付着した場合、これを自動で洗い流す機能を持つ。

ミリ波レーダーは砲塔に搭載されている。砲塔の右前方、左前方、右後方、左後方の4面にアクティブフェーズドアレイアンテナを備えており、Kaバンドを利用して全周を索敵することができる。主力戦車や歩兵戦闘車といった装甲戦闘車両級の目標を8km以遠から探知できるほか、自車に接近する敵の対戦車ミサイルや対戦車擲弾などを発見することも可能である。アンテナは1面あたり最大64目標、4面では合計256目標を同時に追尾する能力がある。これは、後述するアクティブ防護システムと組み合わせて運用される。なお、このアンテナはIFFや通信装置として用いることも可能である。

ESM用のアンテナは車体と砲塔の6か所に設置されており、HFからKaバンドまでの周波数帯で各種電磁波を探知可能である。レーダー波を検知した場合、照射源の方向を1°×1°の精度で特定、さらにデータリンクを通じた三角測量などで、照射源までの距離をも特定する。これにより、例えば敵の攻撃ヘリが自車をKaバンドレーダーで捕捉した場合、味方車両と共に直ちにその位置を防空部隊に通報し、散開して攻撃を逃れる、といったことが可能である。
レーザー警戒システムは、敵の車両や航空機が測距に使用するレーザーを検知して警告するシステムである。砲塔全周の4か所にレーザー検知器が取り付けられているが、これは各種ヘリコプターに搭載された対MANPADS用レーザー検知器を元に開発されているとされる。これにより、自車を照準する戦車やセミアクティブレーザー誘導方式の対戦車ミサイルなどを検知、照射源の方向を1°×1°の精度で特定することが可能である。
これらのシステムは、後述するアクティブ防護システムと組み合わせて運用される。

偵察用無人航空機は砲塔に搭載されており、車長用ハッチの隣に設けられたハッチ内に格納されている。クアッドコプター形式で、4基の静粛性の高い電動モーターにより飛行する。最大32倍まで拡大可能で、2km先の人間大目標を識別可能な高性能可視光/サーマルカメラを搭載する。電力供給と映像データのやりとりはケーブルを介して行われるため、車両から200m以内の範囲でしか飛行することができないという制約があるものの、戦車が単独で、上空数十メートルの視点から戦場を俯瞰的に視察可能となったことは、状況認識能力を格段に向上させた、という意味で大きな進歩である。基本的には車長用パノラマサイトの延長上の装備と考えられているため、操縦は車長が行う。

T-15は優れたセンサーフュージョン能力を有している。ディスプレイおよびヘッドマウントディスプレイ上では、後述するデータリンクシステムを含めたあらゆるシステムで取得した目標の情報について3段階で脅威度を判定し、脅威度・攻撃優先度順に並べることができる。脅威度の判定基準としては、脅威度IIIが「戦車を撃破しうる火力を有し、なおかつ戦闘準備を整えている目標」、脅威度IIが「戦車を撃破しうる火力を有するが、戦闘準備を整えていない目標」、脅威度Iがその他の目標とされている。また、敵の指揮車両、通信車両などについては、脅威度IIIの目標と同等の撃破優先度を与えられている。従来の戦車では、データリンクシステムでこれらの目標情報を共有するには車長が戦術共通状況図に手動で位置情報や種別を入力する必要があったが、T-15では敵車両の発見と同時にボタンを押すだけでその位置が自動で入力される。また、重要情報については、人工音声による音声伝達を行う。
射撃管制システム
T-15の射撃管制システムは、デジタル式の高性能弾道コンピュータを中核に構成されている。弾道コンピュータには、レーザー測距装置、ジャイロを利用した傾斜測定装置、砲口照合装置、風向・風速計、気温・気圧計、装薬温度計など各種センサーが接続されており、これらの入力諸元から弾道計算コンピュータが目標に命中させるのに必要な各種要素を計算し、照準装置に入力する。照準の際は、高解像度カメラによる目標のイメージングと、データベースを組み合わせ、正確に目標の弱点部位を狙う。また、射撃後は後述する弾薬データリンクなども用いて、砲弾の正確な着弾位置を計測し、効果判定を行う。前述した砲安定化装置と合わせることで、T-15は走行間射撃、後退間射撃、スラローム射撃などが可能である。試験では、2000m先の移動目標に対し走行間射撃を行い、次弾命中率ほぼ100%を記録している。弾道計算のソフトウェアはプログラマブルなものを採用しているため、将来的に性能向上を図ることが容易である。
データリンクシステム
T-15は、「MCGC-PVC(戦闘車両向け大容量通信モジュール)」を搭載しており、地上軍、海軍、航空宇宙軍が共同開発した「RCEDT」戦術通信システムに対応している。「MCGC(大容量通信モジュール)」は、あらゆる軍種と兵科に共通の高性能通信装置を支給することを目的に開発されており、HF、VHF、UHFでの通信に対応、従来の全ての軍用無線および軍用ネットワーク端末を代替する。必要に応じて、無線機本体に、衛星通信アンテナ、データリンクと射撃管制システムの橋渡しを行う高性能演算装置、長距離通信のリアルタイム性を高めるために必要なセシウム原子時計など各種モジュールを追加してアップデートすることが可能である。T-15では、無線機本体に、衛星通信アンテナおよび高性能演算装置を搭載している。「MCGC-PVC」により「RCEDT」に対応したT-15では、近接戦闘部隊統合射撃指揮システム、火力戦闘支援システム、諸兵科統合戦闘指揮システムなどの各種サブシステムにアクセスできる。

近接戦闘部隊統合射撃指揮システムは、大隊以下の階梯で運用される、各車両のセンサー情報を射撃管制に使用可能なサブミリ秒単位での精度を保ったまま共有するためのシステムである。主力戦車、歩兵戦闘車、装甲兵員輸送車などの近接戦闘を主とする戦闘車両で使用され、前述した索敵システムと連接されており、発見した目標について従来のように車長が手動で目標を入力する必要はなくなっている。基本的には、小隊を1つの運用単位とし、各運用単位内で火器管制に使用可能な精度での戦術状況共通図を共有し、同一目標への一斉射、各車両への目標割り当て、援護射撃などに利用することが可能である。これにより従来の無線連絡よりも高速で部隊内の意思統一を可能とし、また効率的な索敵と目標撃破を可能とする。

火力戦闘支援システムは、前線の近接戦闘部隊、観測車両、観測用無人機と、各大隊、連隊、旅団、師団隷下の砲兵部隊、空軍の近接航空支援機やマルチロール機、前線航空管制部隊、そして当該システム運用のために新設された統合火力指揮統制所を接続するシステムである。前線の近接戦闘部隊、観測車両、観測用無人機が収集した情報は迅速に処理され、火力支援任務に必要とされる各火砲・砲弾または各航空機と兵装が選定され、各種射撃諸元が計算され、砲兵部隊や航空機にそのデータが転送される。これにより従来よりも遥かに迅速かつ効果的な火力支援が実施可能となる。非常に充実したセンサー類と高い生存性を兼ね備えたT-15は、当該システムの「目」として機能する。

諸兵科統合戦闘指揮システムは師団戦闘指揮システムを発展させたもので、中隊以下の部隊が所持する携帯端末、中隊以上の部隊本部が装備するラップトップ端末、大隊以上の部隊本部に設置される情報処理装置を用い、敵味方の各部隊や車両などの位置を師団内の戦術状況共通図で共有し、指揮統制の効率化を目指すシステムである。このシステムについても、前述した索敵システムと連接されており、発見した目標について従来のように車長が手動で目標を入力する必要はなくなっている。さらに2021年より、各種端末に、AIを導入した戦術状況判断サポートシステムが導入されている。このシステムを利用することで、リアルタイムに変化する戦場の情報を常に更新、AIがその情報とより上位の部隊指揮官からの命令を基に最適な判断をサポート、部隊指揮官はより迅速に適切な意思決定が行えるようになる。下車戦闘中の歩兵ならば分隊単位、戦闘車両については1両単位、無人機や回転翼機などの航空ユニットについては1機単位で表示される。

この他、T-15では弾薬データリンクを導入している。前述した各種センサーシステムと合わせ、着弾を観測し、敵車両に与えた損害をデータベースを参照して適切に評価する。必要に応じて、システムは再攻撃を推奨する。また、目標に与えた損害については、「近接戦闘部隊統合射撃指揮システム」によって僚車などにも共有され、さらに同一目標に対し複数両で射撃を行った場合は、全ての車両のデータを重ね合わせて効果判定することができる。

防御力

装甲
T-15では、従来型戦車よりも耐弾性能に優れた新型複合装甲を採用している。車体正面、車体側面、砲塔正面、砲塔側面、砲塔上面、サイドスカートは内装式のモジュール装甲となっている。任務の性質や輸送時の重量の制限などに応じて、装甲を着脱できる自由度を持つ。また、新型装甲が開発された場合や、被弾して装甲にダメージを受けた場合にも容易に交換することが可能になっている。内部に搭載される複合装甲の素材と厚みについては明かされていないものの、高密度鋼、チタニウム合金、炭化ホウ素から構成される拘束セラミック方式の複合装甲で、また破片の飛散を防止し乗員を保護する合成繊維の内張を備えると言われている。これにより、車体正面と砲塔正面は、APFSDS弾に対して均質圧延装甲換算で1200~1400mmの防御力を有するとされる。
その他の車体の部分には、T-10主力戦車と共通の新型均質圧延装甲を採用している。鋼板内の結晶を微細化することにより、同重量の装甲で、T-90の均質圧延装甲よりも15~20%程度防御力を向上させている。また、温度変化による防御力低下に強く、昼夜の寒暖差が非常に激しい砂漠での戦車戦でも安定した防御力を発揮する。
アクティブ防護システムや爆発反応装甲を装備せずに行われた耐弾試験においては、砲塔正面は仮想敵の120mmAPFSDS弾の直撃に耐え、側面装甲なども、至近距離に落下した152mm砲弾の破片、40mmAPDSによる掃射、対戦車擲弾の直撃に耐えるだけの能力を発揮したとされている。
追加装甲
車体正面、車体側面、砲塔正面、砲塔側面、砲塔上面、サイドスカートに複合装甲と爆発反応装甲を兼用する「BR-4」反応装甲モジュールを搭載することが可能である。「BR-4」は、まず表層2枚の鋼板を射出して敵のAPFSDSの弾芯を破砕したり、HEATのメタルジェットを拡散させる。続いて、拘束セラミックの複合装甲でそれらの衝撃を受け止める。「BR-4」は、均質圧延装甲換算でAPFSDS弾に対して400mm、HEAT弾に対しては900mmを超える防御能力を有する。前述したモジュール装甲と「BR-4」爆発反応装甲を全て装備した時の重量は60tであるが、全て取り外した場合は45tまで重量が軽減されるため、戦略機動性に優れている。
アクティブ防護システム
T-15には、アクティブ防護システムである「SPA-4」が装備されている。「SPA-4」は前述したミリ波レーダーやレーザー警戒装置やレーダー警報装置や全周監視システムによって、敵の対戦車ミサイルや砲弾の接近を探知する。まず、探知した目標に対し、レーザーとコード化された赤外線パルスによりジャミングが行われる。それでもなお接近し続ける目標に対しては、目標の飛翔方向から弾道を計算、砲塔周辺に4基並べられた連装発射機のうちどれを射出するのかを決定し、目標の位置、移動速度、移動方向に基づいて迎撃を実施する。迎撃に際しては薬莢に詰められた金属製のペレットを発射、デコイ発射式の対戦車ミサイルに対応するため、発射されてから0.1秒以内に次弾が装填される。各発射機の装弾数は12発である。システムは最大で1700m/sまでの目標を迎撃することができる。システムは車体全周360度をカバーするが、随伴歩兵の保護などのため、必要に応じてその範囲を狭めることができる。
乗員配置
乗員配置は、砲塔に車長と砲手が、車体に操縦手が搭乗する従来と同じ方式である。車体および砲塔は完全な与圧式CBRNE防護装置を備え、NBC兵器によって汚染された環境下でも行動可能である。

機動力

エンジン・変速機
T-15は出力の割に小型軽量な水冷式の多燃料対応ディーゼルエンジン「MD-15」を搭載する。「MD-15」は排気量約30LのV型12気筒4ストロークディーゼルエンジンで、電子制御式のコモンレール式燃料噴射装置と可変ノズル式のツインターボチャージャーを搭載しているのが特徴である。ツインターボを動作させることによって、平均標高1800mのメキシコ高原であっても高い機動力を維持することが可能である。ツインターボを動作させない場合の出力は最大1800馬力、ツインターボ動作時の出力は最大2100馬力に到達する。ただし、低地においてツインターボを動作させるとエンジン寿命を縮めてしまうため、基本的にツインターボの使用は空気密度が小さく酸素濃度が低い高地に限定されている。このエンジンの大出力により、最大戦闘重量60t時であっても出力重量比は30に達する。また、「MD-15」エンジンは-50度から+60度までのあらゆる温度範囲で正常に動作し、また3重のエアフィルターにより99%を超える粒子を除去することが出来るため、砂塵の多いメキシコ北部の砂漠などでも使用可能である。燃料は車内に1500Lまで搭載でき、その航続距離はおよそ750kmとされる。また、車体後部に外装式の増槽タンクを搭載すれば、燃料搭載量は2000Lに増加するため、航続距離は1000kmに達する。この他、停車中にも各種ベトロニクスを使用できるようにするため、小型のガスタービンエンジンを補助発電装置として搭載している。

変速機には油圧機械式無段階変速操向方式を採用している。車両質量当たりの起動輪出力が大幅に向上しているため、従来のT-10主力戦車と比較し、旋回半径は半分となっている。エンジンと変速機はパワーパックとして一体化されており、エンジンを横置き配置とすることでパワーパックをコンパクトにまとめ、車体を小型化することに寄与している。また、小型軽量大出力の複合エンジンと油圧機械式・無段階オートマチック変速操向方式のトランスミッションの組み合わせにより、パワーパックの高効率・高応答化、そして小型・軽量化を実現している。最大戦闘重量時であっても、最高時速は整地であれば時速75km、不整地でも時速60kmに達する。なお、後退時にも前進時と同じ速度を発揮可能であり、迅速な陣地転換に役立つ。変速機は、時速30kmまで5秒以内に加速する優れた加速性能、時速50kmから2m以内に停車する制動性能を持ち合わせる。
操縦
操縦手は操縦士用潜望鏡の他、カラーディスプレイおよびヘッドマウントディスプレイを通じて全周監視システムの360度立体映像を確認することができ、これを用いて操縦を行う。また、T-10と同様、これまでの戦車ではメーター型だった各種計器をフラットパネル化している。操向装置には流体を使用したハイドロスタティック式操向装置が使用されており、スムーズな旋回が可能となっている。
懸架方式
転輪は片側7つである。従来の主力戦車と比較して転輪の数が増えた理由としては、奇数数の転輪の方が旋回性能に優れるため、という説がある。懸架装置としては、全転輪で可変ダンパーを備えたハイドロニューマチックサスペンションが搭載されており、さらに全転輪に装備されるショックアブソーバーと半自動地形判断機能により、極めて高い悪路走破性能を有する。またサスペンションは主砲の反動制御にも使用され、最小戦闘重量時である45t時でも問題なく強力な125mm滑腔砲の反動を吸収、極めて強力な135mm滑腔砲を装備する改良型のT-15A主力戦車においても最大戦闘重量時である60t時ではほとんど車体を揺動させずに射撃が可能である。またサスペンションは車体を前後左右に最大10度ずつ傾斜させる機能を持ち、リモートウェポンステーションを含めなければ1.8mという低車高に由来する俯角の不足を補うことができる。これによって、砲塔をどの方向に指向していても大きな俯角を取ることができるようになっている。これらの特徴は、砂漠や山岳といった起伏に富む地形の多いグラン・メキシコ軍の想定戦域において大きく優位に働く。

派生型

T-15

T-15は基本型。2014年ごろから調達されており、2022年現在、3200両以上が配備されている。

T-15A

T-15Aは仮想敵国における重戦車の増勢に対応して開発された改良型。T-95を代替するために開発されたと推測されている。プラズマ点火式135mm滑腔砲を搭載しているのが最大の改良点である。2020年ごろより急速に調達が開始されており、2022年現在、900両以上がリオグランデ正面軍の戦車師団中心に配備されている。

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