従来、グラン・メキシコ軍の戦車は徹甲弾、多目的対戦車榴弾、破片効果榴弾の3種の主砲弾を混載していた。T-15では、新型砲弾「APE-17」を統合したことで、基本的に搭載する砲弾は徹甲弾と多目的榴弾の2種類に絞られた。
対戦車戦闘で使用する徹甲弾は、T-15の改良された「CT-15」戦車砲からの発射のために開発された専用新型砲弾「PB-14」APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)あるいは「PB-14」の廉価型である「PB-16」APFSDSである。
「PB-14」は標準的な構造のAPFSDSでありながら、同等口径の主砲の発射するAPFSDSの中で最大級の破壊力を持つと言える。発射薬の重量は10.8kgにも達する(例えば、「PB-96」の発射薬は8kg、「PB-08」の発射薬は9kgである)。装弾筒は軽量な複合材製で、侵徹体に発射薬の強烈なエネルギーを伝える。侵徹体の砲口初速は最大で2000m/sに達する。
侵徹体は長さ1100mm、直径30mm、重さ12kgで、チタニウム合金製の風防・トレーサー、高強度鋼製の鞘、そして全長約1000mmのタングステンカーバイド製の弾体からなるハイブリッド方式となっている。これはAPFSDSの着発を検知し、鋼板等を爆薬で飛翔させて弾芯を破砕して貫徹力を大幅に減衰させることが可能な、低感度爆発反応装甲に対応するためのものである。APFSDSに対抗可能な爆発反応装甲は、APFSDSの侵徹体と同等の口径である20~40mmの機関砲弾などが直撃した際、誤って起爆することを防ぐため、衝撃波に対し相当に低感度に設計されている。そこで、「PB-14」では、まずタングステンに比べて低密度なチタニウム合金製の風防と高強度鋼製の鞘が目標に着弾することで、衝撃波の大きさを重金属製の弾芯を持つ機関砲向け徹甲弾と誤認させ、爆発反応装甲を起爆させずに貫徹することを目論んでいる。
また「PB-14」ではタングステンカーバイド製弾芯の形成時に特殊な加工方法を採用している。APFSDSの弾芯にタングステンを使用する場合、着弾し弾芯が装甲に衝突する際に先端部の形状がマッシュルーム状に変形、先端部の外径が衝突時の外径よりも大きく広がることで急激に貫徹力が低下するとされている。一方、劣化ウランを弾芯に使用した場合このような現象は起きず、逆に着弾時には先端部がさらに尖った形状に変化し、ますます貫徹に適した形状となる。この作用は「セルフ・シャープニング」と呼ばれる。このため、同速度でタングステン製侵徹体のAPFSDSと劣化ウラン製侵徹体のAPFSDSを着弾させた場合、劣化ウラン弾芯製APFSDSの方が貫徹力で10%程度勝るとされている。実際に、90年代のグラン・メキシコ軍の試験では、同初速で同じ長さの侵徹体を発射する場合、タングステンカーバイド製の侵徹体の2000m先の均質圧延鋼板に対する貫徹力と、劣化ウラン製の侵徹体の3000m先の均質圧延鋼板に対する貫徹力が同程度とされていた。一方、劣化ウラン製侵徹体のAPFSDSの最適着速は1700m/sで、それ以上の速度ではかえって貫徹力が低下する。タングステン弾芯製のAPFSDSの最適着速はおよそ1800~1900m/sで、この速度域においては劣化ウラン弾芯製APFSDSを上回る貫徹力を発揮する。
このため、「PB-14」の開発に当たっては、タングステンカーバイド製侵徹体でありながら、「セルフ・シャープニング」現象を起こすような理想的な侵徹体を目指して開発が行われた。そこで「PB-14」の侵徹体では、アモルファス金属粒子をマトリックス層として分散させた状態でタングステン粒子をアモルファス金属粒子間に一体的に接合、目標への着弾時にアモルファス金属粒子のマトリックス層が局所的に剪断破壊しながら目標の装甲を侵徹するように構成している。これにより、タングステンカーバイド製でありながら、「セルフ・シャープニング」現象を生じて貫徹に適した形状を維持したまま目標装甲内部を侵徹するような侵徹体を製造することに成功している。「PB-14」は2000m先の目標に対し、均質圧延装甲換算でおよそ1200mmの貫徹力を発揮する。
また、「PB-14」の廉価型として、「PB-16」が採用されている。これは「PB-14」のタングステンカーバイド製の弾体を劣化ウラン製の弾体に置き換えたものである。侵徹体は長さ1100mm、直径30mm、重さ12kgで、チタニウム合金製の風防、高強度鋼製の鞘、そして全長約1000mmの劣化ウラン製の弾体からなる。ハイブリッド方式の利点は前述の通りである。弾体は、劣化ウラン、バナジウム、ニオブなどの合金となっているが、詳細な組成は公表されていない。劣化ウラン製侵徹体の最適着速である1700m/s付近で目標に着弾させるため、発射薬量が調整されており、砲口初速は1750m/sに抑えられている。「PB-16」は2000m先の目標に対し、均質圧延装甲換算でおよそ1060mmの貫徹力を発揮する。グラン・メキシコ軍は、「PB-14」が高価であるため、当面は「PB-16」を大量に配備する方針である。
その他の目標との交戦には、従来の多目的対戦車榴弾および破片効果榴弾を代替する「APE-17」多目的榴弾を使用する。「APE-17」には敵の対戦車班のような軟目標から、装甲車やコンクリートトーチカのような硬目標までを攻撃可能とすることが求められた。計画段階では在来型の多目的対戦車榴弾や粘着榴弾など様々な弾種が検討されたが、最終的には、低感度爆薬を使用する多目的信管を備えた榴弾が設計された。このようなコンセプトのため、「APE-17」は通常の榴弾よりも分厚い弾殻を持つが、1200m/sという榴弾としてはかなりの高初速で発射されるため、起爆時に生成される破片の飛翔速度は従来の榴弾のそれよりも速くなっており、より小さな破片でも十分にソフトスキンを殺傷できることから、より多くの破片をより細かく生成するように設計されている。またこの高初速により、炸薬の炸裂で生成される破片の速度よりも砲弾自体の速度が上回り、見かけ上全ての破片は前方に飛翔するため、キャニスター弾のような運用が可能である。「APE-17」のため、オクトーゲンをベースに、コンクリートトーチカに高速で衝突しても信管が作動しない限り起爆せず、それでいて高い殺傷能力を兼ね備える新型爆薬が開発されている。この新型爆薬により、「APE-17」は弾頭を12.7mm弾で射撃しても起爆しないほどの低感度を備える。「APE-17」は、プログラマブルかつマルチモードな信管を備えている。この信管は、着発、遅延、エアバースト、近接の3モードで動作することができる。遅延信管モードでは、戦車を除く大半の装甲車両や、コンクリートトーチカのような硬目標を撃破可能である。エアバースト射撃時は、レーザー測距装置から起爆時間を設定し目標上空で起爆する曳火射撃を行うことができる。近接信管モードでは、レーザーを用いて目標への接近を検知し爆風を指向できる。これは主にホバリング中のヘリコプターなどに対して使用される。動作モードの変更は砲手席のディスプレイで変更可能である。
CT-12の対硬化目標射撃
CT-12の曳火射撃
T-15Aの搭載する「CT-18」135mm滑腔砲は、「CT-15」と同様、徹甲弾と多目的榴弾の2種類の砲弾を搭載しているとされている。搭載する徹甲弾は「PB-20」、多目的榴弾は「APE-21」である。「PB-20」は「PB-14」の拡大型と見られており、重量22.5kg、直径40mm、全長1400mmのタングステンカーバイド製ハイブリッド侵徹体を初速2000m/s以上で発射し、2000m先で1680mmの均質圧延装甲を貫通する能力があるという。「APE-21」は「APE-17」の拡大型とみられており、口径が拡大した分、炸薬量も増大、危害半径や対べトン攻撃力などは増加していると考えられている。またこれらの砲弾は2010年代前半に行われた電熱化学砲の技術実証試験の技術のフィードバックを受けて開発されており、従来式の電気雷管に代わり、プラズマインジェクタによる全く新しい点火システムを備えているという特徴を持つ。プラズマによって瞬間的に大きなエネルギーを与えることができるようになったため、装薬の極低感度化による生存性向上と、装薬温度に関わらない安定した燃焼や、各砲弾の製造時の公差に起因する燃焼開始タイミングのバラつきの改善による命中精度向上を実現している。
「CT-15」および「CT-18」はガンランチャーとしても運用でき、「MAT-09」対戦車ミサイルが発射可能である。「MAT-09」対戦車ミサイルは6kmの射程をマッハ0.9の速度で飛翔する能力を有しており、非冷却式の赤外線画像シーカーを搭載、撃ちっぱなしで誘導が可能である。必要に応じて、弾薬データリンクを介することによりシーカーの映像を車内に中継し、砲手または車長によって目標を選択して攻撃することもできる。ダイレクトアタックモードとトップアタックモードの2種類の攻撃モードがあり、通常はトップアタックモードでの攻撃を行う。トップアタックモードでは、発射されたミサイルはデュアルスラストロケットモーターで加速し、上空150m付近を亜音速で飛翔、敵戦車の脆弱な天板装甲を狙い撃ちする。弾頭はタンデムHEAT弾頭となっていて、均質圧延装甲換算で800mm以上の装甲貫徹能力を持つ。戦車の他、低速で低空を飛行中の攻撃ヘリなども交戦の対象となる。
T-15の運用する各種砲弾とミサイルは全て、後述する弾薬データリンクに接続できる。この弾薬データリンクを用いることで、砲弾の着弾を正確に観測できる。詳細は後述する。