第2.65世界線　【架空国家を作ろう】

至高なる永遠氷国の歴史は、一般的な民族とは違い、新石器時代から始まる。
氷国人?の祖先はアフリカから南米にわたる際に難破し、南極にたどり着いたものと推測されている。
なので、農耕開始以前の遺構は一切見つかっていない。
至高なる永遠氷国は建国以来、常に滅亡の危機に瀕していており、かつ国家としての人数が少なかったことから、反乱や王朝交代などを経ることなく現代にいたっている。

他種族との交流が存在しない氷国人の祖先は、歴史的遺構からしかその歴史を読み取ることができず、石板発明以前の詳細な歴史はよくわかっていない。
一方、記録を残すことに執念さえ感じる氷国人の性質より、石板発明以降の記載は豊富に存在する。戦乱などもなかったため、現在でも紀元前の頃の石板が現存している。

南極にたどり着いた祖先は、付近にあった大空洞に身を寄せたものだと思われる。
この大空洞は「キルヒアス大空洞?」として現在は観光保存されている。
氷国人の先祖は難破時に植物の種などを複数種類持ち込んでいたものと思われ、そのうちいくつかが大空洞内で適応できたものと思われる。
大空洞内では湧水がわいており、歴史的遺構として保存が決定されるまでは農業が続けられていた。
また、付近のわずかな植物で火を起こそうとした遺構もみられるものの、おそらく燃料供給の問題で失敗したものと思われる。

現在、氷国では「氷国語?」が公用語だが、これに文字が付いたのは紀元前1310年頃だと思われる。
当時の部族の資源管理担当であった若者が、氷の壁に物事を書き記すことによって管理を楽にすることを発明し、それが当時の族長らに伝わり、とにかく物事を書き記すようになったようだ。
ただ、このころはまだ文法が定まっていなかったようで、めちゃくちゃな文章も一部残っている。
また、この当時はすべて氷の壁に書き記していたため、溶けたり上から氷ができたりして大部分が現代まで伝わらず消滅してしまったようである。

南極は、常時雪が解けずに一面が白いため、隕石を探しやすいという利点があった。
隕石は鉄などの金属によって構成されているため、鉄の精錬が不可能な南極では唯一の金属入手手段であった。
この隕鉄を石で加工してできたナイフが、氷国の革命的な革新をもたらした。
隕鉄ナイフにより、ペンギンや魚の解体作業が格段に楽になり、また石板を作り記録を残すことができるようになった。
紀元前1270年頃、最初の石板が掘られたと思われ、当時の石板が至高なる永遠氷国国立図書館?に保管されている。

紀元前1223年、猛烈な寒波により食料がつきかけ、全滅の危機に陥っていた氷国人の祖先は、族長に種族の全てを託し、生き残りに全力を注いだといわれている。
この際、亡くなった同族の遺体をも食ったという記録が残っており、遺跡などからもほぼ事実であろうと思われる。
この冬を超えたのち、族長は「ここは極寒の地だが、それは神が我々に与えた試練であり、この地を永遠に発展させ、至高の楽園にせよとの暗示なのだ」と発言し、「至高なる永遠氷国」の成立を宣言、「皇帝ミルダヴァス?」として即位した。
ただし、この時の宣言はあくまで部族に自ら名前を付けた程度にとどまり、国としての実態を持つのはだいぶ先になる。
また、皇帝は同族食いを指示したことに強い罪悪感を覚えていたようで、強い後悔を示唆する文章が現在も記録に残っている。

至高なる永遠氷国の成立をもって古典に入ったとみるのが歴史家の統一した見解である。
古典時代時代には他国との交流は一切なく、自然との闘いが主であった。
南極では木が生えていない関係上、建築に使うのは主に石などの天然資源や、アザラシ・ペンギン・野鳥などの骨や皮である。
大空洞で寒さをしのぎながら、農耕や狩猟を続けていた。その日の生活に余裕がないため、文化や学問の発展はほとんど起きなかった。
大空洞を掘削し拡張しようという試みも行われたようではあるが、天井付近の掘削ができず、光が届かない問題が起きたため、限定的にとどまった。
人口は約1万人程度で推移し、国民には国という意識はなかった。
この状況に変化が訪れるのは、1753年にイギリスと接触してからである。

1753年1月18日、南極半島に一隻の船が現れる。エドワード・ボスコーエンを乗せたイギリスの船である。
有史以来初めてとなる別種族との邂逅は、案外すんなりと終わった。ボスコーエンは、こちらに対し友好的な態度を見せたからである。
ボスコーエンは皇帝と面会したのち、水と食料を補給し去っていった。