CAP-15では、多種多様な砲弾を使用可能である。1990年代、CAP-90の配備と並行して「モジュール砲弾・装薬システム」が整備され、分離式のモジュール装薬である「CS-90」、モジュール化された信管を備えた「APE-90」高性能通常榴弾および従来の瞬発、延期、近接信管を全て代替する「EA-90」多目的信管が軍内に普及された。この他、「CS-90」を用いて発射可能な各種砲弾として、「OR-95」対人/対車両クラスター弾、「OR-03」対戦車クラスター弾、「APEG-99」レーザー誘導砲弾、「APEG-01」精密誘導砲弾が開発された。CAP-15の開発に当たっては、「モジュール砲弾・装薬システム」についても一新することを目的に、前述した新型の点火システムに対応して「第二世代モジュール砲弾・装薬システム」が整備され、より低感度でかつ強力なユニチャージ装薬である「CS-15」、より強力な破壊力を持つ砲弾である「APE-15」高性能通常榴弾、、「OR-18」対戦車クラスター弾、「APEG-15」長射程精密誘導砲弾、「APEG-19」精密誘導砲弾、さらにより新しい信管である「EA-15」弾道修正機能付き多目的信管が開発されている。ここでは、上記の砲弾、装薬、信管について解説する。この他、設計上はさらに旧式の砲弾や装薬や信管を使用することも可能であるが、ここでは解説しない。
砲弾
APE-90榴弾
APE-90榴弾は従来の152mm榴弾を代替するために開発された榴弾である。高フラグメンテーションの鋼製弾殻に、10.8kgのジニトロアニソール、ニトロトリアザロン、トリメチレントリニトロアミンからなる低感度爆薬が充填されている。銅95%、亜鉛5%の真鍮からなる溶接タイプの弾帯を備えており、最適化された破片散布パターンによって従来よりも30%以上加害力が高まっている。また、従来の榴弾はフラットベース(平らな弾底)を備えていたのに対し、空力学的に洗練された設計であるAPE-90ではホローベース(窪んだ弾底)を備えている。これは、砲弾の横を通過した空気が、弾底部で渦流を作って圧力を低下させることで作り出すボートテール抵抗に対する対策である。CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は40kmである。
APE-90A榴弾
APE-90A榴弾は、APE-90榴弾よりも長射程を目指し開発されたベースブリード機構を備える榴弾である。CAP-90から射撃した場合に40kmの射程を持つことを要求されていた。弾底部にガス発生装置とそのノズルを搭載、炸薬量、すなわち威力が若干減少したのと引き換えに、射程が30%程度延長されている。CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は52kmである。
APE-15榴弾
APE-15榴弾はAPE-90を代替するために開発された新型榴弾である。流体力学的にさらに洗練された形状、より最適化された破片散布パターン、極めて低感度かつ爆発力の強い炸薬を備えている。炸薬はオクトーゲンをベースに爆発力を高めるためにアルミ合金などを高剪断混合機で混合したものを使用しており、弾頭を12.7mm弾で射撃しても起爆しないほどの低感度を備える。これによりAPE-15はコンクリートトーチカに高速で衝突しても信管が作動しない限り起爆せず、それでいてソフトスキンに対しても高い殺傷能力を併せ持つ。CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は45kmである。
APE-15A榴弾
APE-15A榴弾は、APE-15榴弾よりも長射程を目指した新型榴弾である。APE-15の弾底部にガス発生装置とそのノズルを搭載したベースブリード弾であり、炸薬量、すなわち威力が若干減少したのと引き換えに、射程が20%程度延長されている。CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は56kmに達する。基本的には後述するEA-15弾道修正機能付き多目的信管と組み合わせて運用され、この場合、最大射程距離付近で30mの半数必中径を有する。
APE-15B榴弾
APE-15B榴弾はAPE-15A榴弾よりもさらに長射程を目指した新型榴弾である。APE-15の弾底部にデュアルスラストロケットモーターを搭載したロケットアシスト弾であり、炸薬量、すなわち威力がある程度減少したのと引き換えに、射程が大幅に延長されている。CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は70kmに達する。基本的には後述するEA-1弾道修正機能付き多目的信管と組み合わせて運用され、この場合、最大射程距離付近で50mの半数必中径を有する。
OR-95対人/対車両クラスター弾
OR-95対人/対車両クラスター弾は、MPDP(二用途小型弾頭)クラスター子弾120発を内蔵するクラスター砲弾である。MPDPの子弾は、人員などのソフトスキンのみならず軽装甲車両に対する攻撃力も持たせることを目的に開発されており、耐装甲能力を有する成形炸薬を採用している。落下中に成形炸薬弾頭が下向きになるよう、子弾には姿勢制御用のリボンと小翼が付けられている。砲弾は上空500m付近で炸裂し、下方の半径50mの範囲の目標を破壊する。子弾の装甲貫徹能力は80mmで、装甲車両の脆弱な天板装甲を貫通する。CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は40kmである。
OR-95A対人/対車両クラスター弾
OR-95A対人/対車両クラスター弾はOR-95対人/対車両クラスター弾よりもさらに長射程を目指した新型砲弾である。OR-95の弾底部にガス発生装置とそのノズルを搭載したベースブリード弾であり、MPDP(二用途小型弾頭)クラスター子弾の数は75発に減少しているが、射程がやや延長されている。CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は50kmである。
OR-98対戦車クラスター弾
OR-03対戦車クラスター弾は、自己誘導式の対戦車子弾2発を内蔵する砲弾である。OR-03の子弾は、磁力計、ミリ波レーダーを備えており、上空で放出された子弾は、まずラムエアーパラシュートにより減速し、続いてボルテックスリングパラシュートにより緩く回転しながらセンサーを起動し目標を捜索する。子弾の弾頭は自己鍛造弾で、直径12cmの真鍮製金属ライナーを1.4kgの炸薬による爆轟で爆発成形侵徹体を形成する。有効射程は100mほどである。目標を探知した子弾は、目標を有効射程圏内に収めるまで降下を続け、自己鍛造弾を射出し、装甲車両の脆弱な天板装甲を攻撃する。目標を探知できなかった子弾は、12時間は地雷として機能し、その後自爆する。CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は30kmである。
OR-18対戦車クラスター弾
OR-18対戦車クラスター弾は、OR-98対戦車クラスター弾の改良型で、改良された自己誘導式の対戦車子弾2発を内蔵する砲弾である。子弾は、磁力計、ミリ波レーダー、非冷却式赤外線画像センサーを備えており、上空で放出された子弾は、小型の翼により回転しながら落下しつつ目標を捜索する。子弾の弾頭は、より直径の拡大された真鍮製金属ライナーとなっており、有効射程と破壊力が向上している。CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は37.5kmである。上陸舟艇に対する射撃にも有用であることから、沿岸砲兵向けにも供給されている。
APEG-99レーザー誘導砲弾
APEG-99レーザー誘導砲弾は、セミアクティブレーザーシーカーを組み込んで静止目標および移動目標に対する精密誘導を可能とした誘導砲弾で、ソ連製のクラスノポール誘導砲弾を参考に開発されている。弾頭は通常の高性能炸薬である。誘導は、地上の砲兵観測車両や偵察車両、または無人機や偵察ヘリコプターなどが搭載しているイットリウム・アルミニウム・ガーネットを用いた固体レーザー(YAGレーザー)照射装置により行われる。飛行経路は弾道フェイズと滑空フェイズに分けられ、通常はまず弾道フェイズにより目標に投射され、予測される目標の位置周辺で滑空フェイズに移行、YAGレーザーを検知して目標に突入するが、悪天候時などは滑空フェイズを長くとる。CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は25kmである。
APEG-99Aレーザー誘導砲弾
APEG-99Aレーザー誘導砲弾は、APEG-99に中間誘導用に衛星測位システムと慣性航法装置を組み込んでより長距離の精密攻撃を可能とした誘導砲弾である。弾頭は通常の高性能炸薬である。まず弾道飛行により目標に投射され、弾道の頂点付近から滑空飛行に移行、YAGレーザーを検知して目標に突入する。APEG-99と比較して最大射程が延伸されており、CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は60kmである。
APEG-01精密誘導砲弾
APEG-01精密誘導砲弾は、衛星測位システムと慣性航法装置を組み込んで精密誘導を可能とした誘導砲弾である。弾頭は通常の高性能炸薬である。砲弾は滑空翼を内蔵しており、弾道の頂点付近から滑空を開始することで大幅に射程を延長できる。これにより、CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は70kmに達する。またAPEG-01砲弾は衛星航法装置、慣性航法装置を内蔵しており、これにより最大射程付近においても半数必中径5~6mという極めて高い命中精度を誇る。これは、同等の射程を持つAPE-15B榴弾にEA-15弾道修正機能付き多目的信管を搭載した場合と比べて、数倍以上の精度である。
APEG-15長射程精密誘導砲弾
APEG-15長射程精密誘導砲弾は、APEG-01精密誘導砲弾よりも長射程を目指し開発された新型精密誘導砲弾である。弾底部にデュアルスラストロケットモーターを搭載したロケットアシスト弾であり、炸薬量、すなわち威力がある程度減少したのと引き換えに、射程が大幅に延長されている。発射後しばらくしてからロケットモーターに点火してさらに加速、さらにその後弾道の頂点付近で滑空を開始することにより、100~110kmという極めて長大な射程を有する。ただし、「師団砲兵にこのような長距離の目標を攻撃する任務が割り当てられることは稀で、必要な場合は同じく師団砲兵に配属されている精密誘導能力を付加した多連装ロケット砲のロケット弾などを使用することが多いこと」、APEG-15の生産数は少数にとどまっている。
APEG-19精密誘導砲弾
APEG-19精密誘導砲弾は、沿岸砲兵および巡洋艦の主砲向けに開発された152mm砲用の精密誘導砲弾である。弾頭は成形炸薬である。砲弾は滑空翼を内蔵しており、弾道の頂点付近から滑空を開始することで大幅に射程を延長できる。これにより、CAP-15からCS-15装薬を用いて射撃した場合の射程は70kmに達する。またAPEG-01砲弾は衛星航法装置、慣性航法装置、ミリ波レーダー、赤外線画像センサーを内蔵しており、これにより洋上を高速移動する艦艇を撃破することも可能である。
装薬
CS-15モジュール装薬
CS-15モジュール装薬は、従来のCS-90モジュール装薬を代替するために開発されたユニチャージ方式の装薬である。形状はトイレットペーパーに類似している。エネルギー密度の向上、低感度化、装薬連結部分の簡素化が主な改良点である。装薬はRDXにアルミニウム粉やポリウレタンなどを混ぜて成形されたものとなっており、従来のCS-90装薬と比較して2倍以上低感度である。これは被弾時の生存性を高めることにつながる。なお、CAP-15では薬室長がCAP-90よりも延長されており、最大でCS-15装薬を8モジュール挿入することができる(CAP-90では最大で6モジュールまで)。これが前述した長砲身と合わさって長大な射程を実現する。
信管
EA-90多目的信管
EA-90多目的信管は1990年代に開発された155mm砲弾用の画期的な信管である。それまでは着発、延期、時限、近接など各用途別に分けられていた信管を全て統合し、補給を簡略化することを目的に開発された。最大の特徴は誘導電流によって信管の動作モードや詳細設定を切り替えることができる点である。動作モードとしては、瞬発、延期、時限、近接の4モードがある。瞬発モードと延期モードを使い分けることで、着弾から0.0001~0.15秒の範囲で起爆することが可能となっている他、時限モードでは発射から最大500秒、近接モードでは地上から最大10mの高度で起爆できる。なお近接モードでは指定高度で起爆しなかった場合のバックアップとして着発信管としての動作も可能となっている。
EA-15弾道修正機能付き多目的信管
EA-15弾道修正機能付き多目的信管は、従来122mm砲弾で用いられていたEA-89信管および152mm砲弾で用いられていたEA-90信管を代替するために開発された多目的信管である。122mm砲弾と152mm砲弾の両方に装着できる。多目的信管であるEA-15はEA-90と同様、誘導電流によって信管の動作モードや詳細設定を切り替えることができる。しかしEA-15は、ある程度の弾道修正機能を有する点でEA-90よりも優れていると言える。この信管は固定式の非対称ピッチプロペラによって砲弾の旋転を利用し偏った揚力を生み出し、これによって弾道を変更することができる。火器管制システムを経由して電子的に目標位置の座標を入力して発射することで、慣性航法装置および衛星測位システムを用いた簡易な航法システムを利用して目標を精密に攻撃する。専用に設計された精密誘導砲弾と比べると精度は劣るが、構造が極めて簡素なため安価であり、加えて既存の砲弾の信管として取り付けるだけである程度の誘導性能を発揮できるという利点がある。